レクイエム


すれ違う猫 言葉を話す
ぼくの名前を呼んだのは君?
そして始まる狂った世界

集まるカラス眼球(まなこ)をえぐり
ぼくの屍は甘い香りで
君に抱かれて朽ち果ててゆく

怖い怖いよ 呼ばれているわ
お願いだからやめてちょうだい

纏う喪服に一輪の花
東京の空は雨の気配で
ぼくの棺を運んでくるよ

南の空に集まる御霊
そう、わかってる これは兆しね
もう行くべきね 従うべきね

怖い怖いよ 呼ばれているわ
すぐに行くから 少し待ってよ

消える消えるよ ぼくも世界も
わかってるから そっとしといて

ラッパは響く 頭蓋に響く
世界を悼むレクイエム
導かれるまま散ればいいのね

いつか来た場所「ここどこだっけ?」
狼たちが廃墟で吠える
ぼくはゆっくり目を開けてみる

君は夢よりやさしい笑顔
細い指先この胸に触れ
ぼくは死んでることを忘れる

踊る踊るよ 君とふたりで
瓦礫の中で 手を取り合って

濡れる濡れるよ 君の吐息で
ずっとこのまま 抱きしめていて

リズムは響く 子宮に響く
ぼくらを悼むレクイエム
導かれるまま散ればいいのね

でも動かない冷たい身体
少しずつ視界が霞んでく
君の鼓動だけが響いてる

これは幻? それともリアル?
どちらでもいい君のそばなら
ねえ唄ってよぼくのために

落ちる落ちるよ 空が落ちるよ
落ちてしまえば痛くないから

消える消えるよ ぼくも世界も
最後くらいは 綺麗でいさせて

全部終わった宇宙に響き
奏で続けられるレクイエム
きみの歌だけを永遠に刻んで

3 thoughts on “レクイエム

Comments are closed.