初音ミクと、革命についての話をしよう

ポップミュージックの歴史って、
20世紀初頭のワークソングから始まり、
例えばアメリカでジャズ、ブルース、カントリーなんかの原型ができて、
ミンストレル・ショーとか巡業するアーティストが地方で歌をヒットさせ、
そういうのがレコードとラジオの普及に伴って広がりはじめ、
ミュージカル映画の拡大とかがさらに後押しして全国区に広がっていく、と。

そこに50年代に入りエルビスが登場し、
白人音楽と黒人音楽が融合されて、
ロックンロールがみんなのハートを虜にする。

なんや「ハートを虜にする」って。
死語やな。

そのブルースやロックンロールが海を越え、
60年代にはリバプールからビートルズが登場して、
やはり世界中のみんなのハートを虜にする。

なんかすっごく歴史を単純化しちゃってますが、

  エルビスが、白人音楽と黒人音楽を

  ビートルズが、アメリカとイギリス(というか世界全部)を

革命的な音楽が登場するとき、何かの境界が揺さぶられる。
いや、素晴らしい音楽が何かの境界を揺さぶって、革命が起きるのかな。

革命は、それが起きてしまったら、
それ以降、その名前を抜きにして歴史を語ることができなくなる。
エルビスも、ビートルズも、そう。

そしていま、起きていることも、たぶん、そう。

もちろん、初音ミクのこと。

70年代から機械と生音の融合なんかは始まっていたけど、
それは何かの境界を揺さぶるまでには至らなかった。

いま初音ミクはいろんなものを揺さぶっている。

  人間と機械の境界。

  創るヒトと聴くヒトの境界。

  一次創作と二次創作の境界。

  趣味と労働の境界。

  金儲けと無償奉仕の境界。

もちろんこれらを現象として捉えたら、
初音ミクだけに起因しているわけではない。

でも音楽(だけじゃないけど)に関するこれまでとは全然違う楽しみ方が、
初音ミクという記号に表象されていることが、やはり革命的なのだと思う。

後世になって振り返ったとき、
初音ミクは、エルビスやビートルズくらいの、
あるいはそれを凌駕するくらいの「革命」として刻まれていると思う。
絶対にこれは、大袈裟な話ではない。

肝心なのは、
たった一人(もしくは数名)の固有名を持つ何者かが、
革命を先導しているのではなく、
初音ミクの名の下に集まった夥しい数のPや二次創作者たちが、
ともに同時に揺さぶられながら、この革命を生きていることだ。

少なくとも僕は、そんな風に考えて歌を創ってる。
その方が、ちょっとワクワクするものね。

だからこんな楽しい状況を共に創りだしてくれているすべてのPや歌い手たちが、
とても頼もしい同志に思える。

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